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[連載コラム] グローバルコミュニケーションの落とし穴

第1回 日本のイノベーションは海外で評価されない?

 「これは画期的なイノベーションだ」。満を持して海外の見本市に出品した新製品なのに現地の反応は冷ややか。品質に自信のあった日本の担当チームは、原因が分からずに困惑…。
 グローバル化が進む今、多くの日本企業が海外展開を進め、現地の企業あるいは消費者に製品やサービスを購入してもらおうとしています。そこで必要になってくるのが、製品やサービスに関する現地での情報発信ですが、日本での情報発信をそのまま現地で行おうとするとそこに落とし穴が待ち受けている可能性があります。
 冒頭の事例では、「イノベーション」という言葉が落とし穴でした。日本では当たり前に見聞きする革新的な製品や事象に使う言葉ですが、海外で使う場合は慎重にならないといけません。

 英語の「innovation」は、革新や一新という意味を持ち、発明に近いニュアンスがあるからです。ビジネスで使う場合は産業構造や仕組みを根本から変えるくらいのものでなければなりません。冒頭の日本企業は、画期的な機能だからと製品名にイノベーティブという言葉を使ったのですが、その製品はこれまでの技術を焼き直して機能を改良したレベルで、決して新発明ではありませんでした。そのため、国内では「すごい新製品」と受け取ってもらえるネーミングも、海外では「???」となってしまったのです。
 国内外でのこうした温度差は、必ずしも英語の理解度や用い方の違いによるものではなさそうです。総じて日本の消費者は、上から目線の言葉に弱く、そうした情報発信が効果を生む傾向がマーケット全般にあります。これは、欧米の消費者やマーケットとは真逆です。
 私は、日本と米国で半々の人生を送り、現在は東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、北京、上海を拠点に日本企業の海外広告プロモーション、ブランディング、マーケティング分析を行っていますが、この日本と海外の情報の受け止め方のギャップにはいつも注意しています。

製品につけてはいけない名前

 「イノベーション」以外の製品名では、「i」を使ったネーミングも、しばしば見られる「???」なものです。IT、Information、あるいは日本語の「愛」や「私」を想起させるという理由で日本では「i」を付けるネーミングが少なくありません。しかし、このネーミングをそのまま海外に持っていくと、現地のマーケットの反応はいまいちかもしれません。「アップル社の製品ではないのになぜ『i』なのか」ととらえられてしまうからです。「i」の付く製品イコールアップル製品というのが、世界規模のマーケットなので、真似をしているというネガティブな印象を持たれてしまいます。日本では通じても、世界では通じない。となると、製品名一つにも現地の感覚を踏まえた置き換えが必要です。We are global companyなど「グローバル」という言葉遣いも、使ってしまいがちですが、海外では企業を形容することがあまりない言葉です。このように、製品や企業をプロモーションする上でWEBサイト上の表現などにも気をつけなければなりません。

 海外事業を展開するにあたって言語の壁は必ずぶつかる問題です。言葉とは、セールスコピー、会社の売り文句、製品名、プロモーション広告など、営業や販売に大きく影響があります。言葉の置き換えで失敗しないためには、海外の現地スタッフや外国人社員の声に耳を傾けることが肝要です。しかし、トップダウン型の日本企業の多くは、海外の現場の意見を受け止める姿勢に欠けています。こうした組織構造の問題も、言葉の置き換えによる失敗を生んでしまう一つの要因となっています。トップが柔軟に海外の現場の意見を受け止める姿勢が海外展開で成功する第一歩といえるでしょう。

向島 湊

グローバルコミュニケーション
研究員

向島 湊

株式会社エーフォース 統括ディレクター
米国ニューヨーク州立大学芸術学部卒。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、中国を拠点に現地のベンダーと協力して日本企業の海外広告プロモーション、PRブランディング、海外マーケティングの分析、戦略等の一貫した設計に携わる。日系・外資系大手企業のPMO、コンサルタントを歴任。

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