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[連載コラム] グローバルコミュニケーションの落とし穴

第3回 海外で勝つのは「三方良し」より「一点特化」

 今回は日本で受けるデザインとグローバルマーケットで受けるデザインの違いから話を始めてみたいと思います。

デザインとUIをマーケットに適合させる

 日本のEC市場を2分する楽天市場とamazonですが対照的なデザインやユーザーインターフェース(UI)が印象的です。楽天市場が様々な情報やトピックを盛りだくさんに並べたUI、詳細にいたるまで長く説明するレイアウトであることに対し、amazonは情報を最小限にしてスペースを視覚的に利用し、スッキリとしています。日本でうまれた楽天は日本人の好む多機能で複雑なデザインを起用し、逆に北米発のamazonは海外マーケットで好まれやすいシンプルなデザインやUIを選択したことがうかがえます。

 2000年代の検索エンジンの市場においても同様の対照化が可能です。1997年にGoogleが検索市場に参入して、そのシンプルな使いやすさとUX(ユーザーエクスペリエンス)で欧米の多くのユーザーがYahooから流れていきました(欧米では70〜80%以上のシェアと言われています)。その一方で日本ではどうかというとYahooもいまだに根強い支持があります(GoogleとYahooで両社おおよそ半分ずつのシェア)。 天気情報やニュースなどを盛りだくさんにして、画面上部に検索窓をもうけるという日本人好みの多機能さや情報配列をもつYahooのデザインやUIが少なからず影響してのことでしょう。

 他にも、スマホが台頭した2008-2012年(初代iPhoneは2007年発売)に淘汰されていった、それまで日本で主流だったガラパゴスケータイにもたくさんのボタンが並んでいて、着メロなど様々な機能がついていましたね。これもグローバルではiPhoneのようなシンプルなデザインそして直感的UXがマーケットの浸透力をもつという一例です。

 デザインやUIは好みや個人の選択の問題として片付けられてしまいがちですが、対象とするマーケットやユーザー独自の傾向をおさえることが重要です。日本で支持されるデザインはそれとして、海外に製品を売るときは、われわれ日本人の視点ではなくグローバルマーケットの視点で考えなければならないでしょう。特に、日本マーケットと欧米マーケットでは好まれるデザインの傾向が異なるため、マーケットによってデザインやUIをチューニングする必要があります。

なぜ日本の製品は多機能化、複雑化するのか

 日本企業では開発初期の設計ミーティングで様々な意見を商品に盛り込みます。関係各所と調整を行いながら、様々な人の意見をすり合わせるうちに、平均的な意見に集約されていきます。多くの人の意見を反映することで多機能な商品になるというメリットの一方で、こうした「三方よし」の商品開発プロセスで出来上がった製品は、凡庸で特長のない、または他社と近似した商品となることが多くあります。日本では多機能で便利な商品も好まれますが、機能が山盛りの状態では先のデザインやUIも複雑化してしまい、結果としてグローバルマーケットで際立つ強みは見えてきません。

 「羽のない扇風機」や「吸引力の変わらない掃除機」などで有名なダイソンは商品コンセプトの斬新さやサイクロン式を実現した吸塵機能など、ウリや機能を一点に特化することで、デザインやUIもシンプルさを追求することができます。実は、機能や商品特徴の取捨選択こそが、グローバルマーケットで好まれやすいデザインやUIをうむために必要なことなのです。

一点特化の製品を生むための企業風土

 今後日本企業が海外市場で売れる商品・サービスをつくるためには、何に気をつけるべきでしょうか。まず、会議で際立ったアイデア、投機性が高い(≒リスクが高い)ものを残していく努力が必要です。失敗やリスクを恐れて意見を排除する減点方式ではなく、加点方式で他者の意見に耳を傾けることが重要です。「〜だからだめ」ではなく「〜ができたらすごいよね」「〜すれば実現できるかもね」という現実的でないアイデアに対するポジティブな批判があれば、よりクリエイティブで斬新で他社の考え付かない商品コンセプトが生まれるかもしれません。その上で冒頭でお話したように、様々な意見を残すのではなく、フロントデザインや開発後のマーケティングを見据えた戦略的な取捨選択が必要になります。

 企業の中には20代の若手のアイデア力に期待して、積極的に20代のエンジニアを起用し、企画開発会議に参加させる例もあります。そういったアイデアを残していける企業風土をつくっていくことが、企業がグローバルマーケットで生き残っていく条件となってきています。

向島 湊

グローバルコミュニケーション
研究員

向島 湊

株式会社エーフォース 統括ディレクター
米国ニューヨーク州立大学芸術学部卒。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、中国を拠点に現地のベンダーと協力して日本企業の海外広告プロモーション、PRブランディング、海外マーケティングの分析、戦略等の一貫した設計に携わる。日系・外資系大手企業のPMO、コンサルタントを歴任。

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