• TOP >
  • [連載コラム]グローバルコミュニケーションの落とし穴 >
  • 第4回 グローバルで売上を伸ばす企業に共通すること

[連載コラム] グローバルコミュニケーションの落とし穴

第4回 グローバルで売上を伸ばす企業に共通すること

コミュニケーション能力は学ぶではなく、買うのが正解

 グローバル化する経済社会で、社内で英語公用化をすすめる企業や英語・中国語の研修を社員に対して実施する企業が増えてきました。日本では語学力を含めた、コミュニケーション能力は「教育することができる」という前提で企業側も取り組むことが多いですが、ここに実は落とし穴があります。

 例えば、日本企業のトップセールスパーソンが現地語をベラベラに話せるようになったとして、現地のトップセールスパーソンと同等のパフォーマンスを期待してよいでしょうか。現地のセールスパーソンは現地の価値観や嗜好、市場の傾向、さらには商文化を身をもって知っているという点において、強力なアドバンテージをもっています。いま、市場でどんな製品が受けいれられるかという感覚的な消費者視点から、個人に対する経験情報(例:中部アメリカ出身の平均収入的家庭の人の趣味が何で、何の話をすると共感を得やすいか)まで、日本で英語を勉強していたのでは獲得することができないものを多くの情報をもっています。

 セールスやマーケティングにおいて重要なこれらの対人情報やマーケット視点を1から日本で学習するのは、現実的ではありません。パフォーマンス重視で組織を考えるならば、やはりコミュニケーション力は日本人を育成するよりも、現地人を採用した方がよいという判断になるでしょう。現地語を習得してコミュニケーションを取れるようになることは大切ですが、ビジネスでは成果がでるかどうかが見えないコミュニケーションをとるために労力や時間やコストを割くよりも、現地コミュニケーションをとれる人物を採用する方が効率的です。

 保険、不動産、IT、金融など国内売上比が多くを占める企業は、語学の教育研修や英語公用語化にお金をかける傾向にあります。その結果、グローバルマーケットでの競争で後手に回ってしまうことが多く、マーケットインの商品開発、販売ルートの確立の点において競争力を失っています。

 一方で、1970以降から海外売上比が多くを占める大手メーカーなどは、このコミュニケーション能力の問題にかねてから意識的でした。競争力のあるメイドインジャパン製品をつくること、そして販売網は委託すること、その2つが海外向けの基本戦略であったように思います。現地のディストリビューター(セールス販売代理店)と歩みを共にし、長年の良好な信頼関係を築くことで、メーカーと販売店双方にメリットを生んできました。

変えるべきものと変えてはいけないもの

 ここまで、人材やセールスの視点から、現地リソースの大切さをお話ししてきましたが、変えてはいけないものも、もちろん存在します。それは日本企業の持つ経営理念、人事評価制度、生産改善などの「しくみ」の部分です。

 生活用品で有名なアイリスオーヤマは2017年にはグループ年間売上高4000億円を超え、中国に多くの生産拠点とスタッフを擁しています。アイリスは日本独自の欠陥品を出さない生産管理を中国でも実現することで、値ごろ価格、高品質の製品開発を可能としています。また、創業者である大山会長の経営理念が現地で浸透することを徹底し、グループ全体で共有できていることも好調の理由だと思います。実は中国大連拠点の総経理(中国での社長)と1年前にお会いしたことがあるのですが、中国人でありながら日本語がベラベラなことに驚かされました。日本人に中国語を覚えさせて、中国を管理させるのではなく、中国のトップに日本語を覚えさせて本社とスムーズな連携をとるというのは、ある意味逆転の発想と言えます。

 また、丸亀製麺で知られる外食大手トリドールホールディングスは粟田社長自ら世界各地に足を運び、現地パートナーとの信頼構築、販路拡大を続けて、現在世界で1500店舗を展開しています。やはりここでも、日本人に英語や中国語を学ばせて海外へ送るスタイルではなく、コミュニケーションやスタッフは現地人をフルに活用し、その一方でトリドールが大切にしている「おもてなしの心」「手づくり」「できたて」などの顧客に対する運営方針やマインド、そして店舗運営スタイルなど仕組みの部分を現地で活用しています。

 この2社はどちらもコミュニケーション力は現地調達で、仕組みなど変えないものは変えずにという海外戦略が成功した事例といってよいでしょう。またトヨタをはじめとした大手の自動車メーカーも生産管理をはじめとした仕組みの部分と労働力の現地化に重点をおいてきました。このように、変えるべきところは変え、変えてはいけないところは変えないという戦略的な切り分けの判断が重要になるのがグローバル市場です。全てがジャパンウェイでなければいけないということはなく、役割分担ならぬ機能分担ができることが必要と言えるでしょう。世界で価値のある日本らしい仕組みや理念を、現地の協力を十二分に得ながら輸出することが、今後日本企業がグローバルマーケットで成長するため鍵となっています。

次回は商文化の話

日本の常識の一歩外へ出る「アウトオブボックス思考」

 Think out of box(箱の外で思考しろ).自分の常識や価値観から外にでて考えろというこの言葉は英語ではよく使われるフレーズです。コミュニケーションにも「誤差」があるように、実は日本企業とグローバル市場の間にはそういった大きな認識の「誤差」が発生するのです。

向島 湊

グローバルコミュニケーション
研究員

向島 湊

株式会社エーフォース 統括ディレクター
米国ニューヨーク州立大学芸術学部卒。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、中国を拠点に現地のベンダーと協力して日本企業の海外広告プロモーション、PRブランディング、海外マーケティングの分析、戦略等の一貫した設計に携わる。日系・外資系大手企業のPMO、コンサルタントを歴任。

日経BP社ビジネス・サポートにお任せください!

お問い合わせの内容は、必ずしも具体的である必要はございません。まずはお問い合わせください。最適なソリューションをご提案致します。

電話でのお問い合わせ
資料請求・お問い合わせ