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[連載コラム] グローバルコミュニケーションの落とし穴

第5回 日本のビジネスの壁をこえる

“シンク・アウト・オブ・ボックス”思考

“Think Out of Box” 自分の思考や常識の壁を超えて、大胆な発想をしろという意味で海外ではよく使われる表現です。今回は日本のビジネスパーソンに広く浸透する思考や常識、または価値観の中で、グローバルで通用しないものを解説していきます。日本という「箱」から一歩出てグローバルを発見しましょう。

    
グローバルでの会議や商談は予定不調和性を利用する

日本における会議や商談は、資料に書いてあることを順番に話していく、または事前に方向性や結論が社内で打診され形式的に会議をすすめるなど、予定調和性が高いことが特徴です。対立が最小限におさえられ、決議をとりやすいというメリットをもつ一方で、デメリットも存在します。例えば、日本人のビジネスパーソンが予定調和的なプレゼンテーションを進行しても、資料やトピックの外側から容赦のないQ&Aがとんでくることでしょう。また相手によっては「眠い」「退屈だ」「資料を読めばよいので聞く意味がない」と思われるなど様々なデメリットがあります。

    

学生時代に人気のなかった先生、授業に刺激がなく、眠くなってしまうような先生を思い出して下さい。内容や話し方もそうですが、その先生たちの根本の問題はコミュニケーションの予定調和性にあります。教科書に書いてあることを順に読んでいくだけ、インタラクティブ(双方向的)でなく一方的、話し方に抑揚がないなど様々な理由があります。また生徒側もそれを受け止めて授業に参加せず、つまらない授業に拍車をかけているのかもしれません。そこで例えば反対に、その先生が。全く教科書にないことばかりを話し、黒板や資料でなく、生徒1人1人と会話し、またその内容がテストにも出題されるとしましょう。生徒は授業に食い入るように参加するかもしれません。「今聞かなければいけない」「ノートをとるなどして行動をとらなければ成績に影響する」そうした緊張状態や予定不調和を作り出すと、相手の関心と集中を引き出すことができます。

    

グローバルの会議はまさに予定不調和。パワーポイントや資料にないことばかりを話します。予定不調和にするためには、原稿や資料を相手に視覚的に見せないことが重要で、最終的にはジョブスのプレゼンやTEDのスピーカーのように何もスライドがない、または文字数が極端に少ないという状態に行き着きます。その方が相手の緊張や関心を引き出すことができ相手のハートに直接訴えることができるからです。

準備に時間をかけ、資料上の情報を1つずつ確認していく。根回しをして議論の方向や着地点を事前に決めたほうがよい。こうした日本の会議の常識はグローバルでは通用しないことの方が多いかもしれません。“シンク・アウト・オブ・ボックス”思考法で考え、日本での常識を疑って下さい。程よい予定不調和性をもち、準備が少なくとも瞬時に議論を形成しながら、自分の着地地点に誘導するテクニックを身に着けるきっかけとなることでしょう。

プレゼンテーションの違い     
よい製品、よい品質以外の「長期的な強み」がグローバルで生き抜くために必要

““シンク・アウト・オブ・ボックス”思考法が必要なのは、なにも会議や授業に限った話ではありません。

“物づくり大国と言われて久しい日本ですが、80年代にはMade In Japanがグローバルでブランド化するなど、世界的に見てその物づくり品質はある程度の評判があります。一方で、韓国・中国・台湾などのアジア勢がこの10年で家電、自動車、半導体、液晶、PCと多種目において台頭してきました。現在であれば、家電購入において品質面で選ぶならドイツかアメリカ、価格面で選ぶなら中国、両者のバランスを見て選ぶなら韓国か台湾の企業の製品にするというのが世界の評判ではないでしょうか。

現在における日本の物づくり品質への評価は、世界的に見てナンバーワンと言い切れるものではなくなってきました。

日本人は手先が器用だ。日本製は品質が高い。日本国内という「箱」の中にいては、それが不変の常識となっていますが、そのイメージはグローバル市場とは乖離したものになっていないでしょうか。今まで日本は「高品質」というイメージの中に閉じこもっていました。しかし、その箱の外側の世界では、日々熾烈な競争により順位が入れ替わっているのです。これからは「高品質」という箱の外に出る必要があります。箱の外の世界では「日本製はそこそこ安くてそこそこ品質がよい」という評価をグローバルマーケットから突き付けられます。実際のグローバルマーケットでの日本車の代表的な認知のされ方と言ってもよいのではないでしょうか。超高級・高品質のイメージは一般にはドイツやフランスを始めとするEU勢の印象が強く、日本は悪くはないものの大きな強みもなく、今一歩EU勢には及びません。グローバルマーケットの観点に立つと「日本製は品質が高い」というのは、ウソではないものの、絶対的ではないのです。

そんな日本とは裏腹に、アメリカ、ヨーロッパ、中国をはじめとするアジア諸国は圧倒的なコストパフォーマンスや一点特化の個性をもつ製品・サービスでそれぞれの地域や国の国民性や文化に根ざし、強みに磨きをかけ続けています。いまだに「高品質」という価値観の中にいる日本は遅れをとっており、まさに、よい製品や高品質という点では後塵を拝する時代となったと言ってもよいでしょう。日本企業はいま一度箱の外に出て、「高品質」やほかの大きな強みをさらに磨き上げていかなくてはなりません。そうして商品設計や事業計画の段階から、閉じられた価値観という箱の外側に目を向けた“シンク・アウト・オブ・ボックス”思考法が必要になってくるのです。

次回は“脱”物づくり大国ニッポン
向島 湊

グローバルコミュニケーション
研究員

向島 湊

株式会社エーフォース 統括ディレクター
米国ニューヨーク州立大学芸術学部卒。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、中国を拠点に現地のベンダーと協力して日本企業の海外広告プロモーション、PRブランディング、海外マーケティングの分析、戦略等の一貫した設計に携わる。日系・外資系大手企業のPMO、コンサルタントを歴任。

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